アオツヤキノコゴミムシダマシの謎

今まで図鑑の記述を元に、アオツヤキノコゴミムシダマシのオスはツノがあり、メスはツノが無い・・・と単純に考えていました。しかし、交流のある虫ブログで提示された疑問をきっかけに「これは一度確認してみたい」と思うようになりました。
疑問① メスはホントにツノが(完全に)無いのか?
疑問② ツノが短い個体はオスかメスか?
疑問③ ツノが短い個体がオスだとすれば、ツノの長さは体長と関連するのか?
疑問④ オスとメスでは腹面はどう違うか?


まずは過去に撮った中で最もツノが長かった個体。これは明らかにオスだと思います。体長は1匹が4.5mm、もう1匹が5.0ミリでした。アオツヤキノコゴミムシダマシのメスは、オスよりもやや小さめだと思われます。アオツヤキノコゴミムシダマシの体長は、北隆館の図鑑では5mm内外、保育社の図鑑では4.0-6.0mmと書かれています。昆虫の体長で1ミリ差はかなり大きいと思うのですが、保育社の図鑑では体長の幅が2ミリ・・・おそらく、メスの最小個体からオスの最大個体までの幅だと想像するのですが、これほどの幅がある場合はせめて雌雄のどちらを指すのかは書いて欲しいと思う・・・。とりあえず、メスの体長はおおよそ4-5mmくらいではないかと想像してみる。


こちらは今年の1月2日に近所の公園で採集した個体。ツノの長さは、1匹が上から見て頭端に届くくらい(中くらい)、もう1匹がツノというよりただの隆起といった感じ。ツノの長い方が体長5.5mm、隆起程度の方が5.2mmでした。この個体を撮ったときは、小さい方がメスで、「メスにはツノらしいツノは無いけれど、頭には隆起が見られる」と考えていました。悔やまれるのは、そうは考えたものの、腹面の写真は撮り忘れてしまったこと・・・。このとき腹面を撮って両者の違いが確認出来ていれば、その後悩むハメにならずには済んでいた・・・・orz


こちらは今年2月10日に、善福寺公園の朽木樹皮裏で越冬中だった集団。体長は未計測で、採集もしなかった。ツノが顕著に長い個体は居なかったが、越冬中の個体にはそれほどツノが長い個体を見かけたことは無い。越冬した個体はその後産卵して子孫を増やす役割を担わなければならないはずなので、メスが多いはずだと思っている。実際、写真を見る限りでは体長が小さめの個体で「ツノが全く無い(隆起すら無い)ように見える」個体(右端の画像の右側の個体)が見える。体長は測っていないが、おそらく最小個体は4mmほどだと思う。

・・・・で、2月17日に交流のある虫ブログで疑問が提示され、「メスはツンツルテン~隆起程度だよ。・・・のはずだ。・・・のはずだと思ったがなぁ。・・・んむむ・・・ちょっと再確認してみるか?」といった感じになり、まずは図書館へ。新宿区の中央図書館で北隆館の図鑑を調べ、千代田区の千代田図書館で保育社の図鑑をコピー。どちらもオスについての記述しか無い。次にネット上で、初記載時の文献を探すが見つからず。Platydema属の英語で書かれた検索表を見つけるものの、これもオスについての記述しか無い。おそらくメスでは種類を見分けることが出来ないため、オスの個体で検索するようになっているものと思われる。最後にBag Guide.netでPlatydema属各種の画像を眺める。雌雄をはっきり明記している画像や腹面を写したものがほとんど無いため、あまり参考にはならず・・・・。しかし、オスにツノがあるPlatydemaでは、メスに隆起が見られる種類と、全くのツンツルテンである種類が居ることは把握出来た。さて、アオツヤキノコゴミムシダマシの場合は、いったいどちらなんだろう??

まずますわけが分からなくなってきて、「やはり採集して実際に見比べてみるしかない」と判断。出来るだけ樹木の種類や数が多い公園を探し、練馬区の光が丘公園が良さそうだと思った。・・・・で、2月23日に出撃。


なんとか合計10匹のアオツヤキノコゴミムシダマシが採集できた。2010年8月に石神井公園で見つけたのとほぼ同じ外観の「真っ赤な個体」も見つけることが出来た。過去に見たときは種類を判断出来なかったが、樹皮下の甲虫にときどき見られる赤色型(例えばクロツツマグソコガネとか、ルリゴミムシダマシとか)だろう。種類が判断出来なかったのは、Platydema属はどれも外見や大きさが似ていてぱっと見が同じに見えるから。しかし、今回は北隆館や保育社の図鑑で、ついでに他種についても調べておいたので、とりあえず種類だけは分かった。

東京都本土部昆虫目録に記録のあるPlatydema
マルツヤキノコゴミムシダマシ Platydema kurama -・- ・-・-・-・-・芳・-
アオツヤキノコゴミムシダマシ Platydema maruseuli 皇・皇F・-・大・板・-・-・-
クロツヤキノコゴミムシダマシ Platydema nigroaeneum -・- ・-・-・-・里・芳・他
ヒメオビキノコゴミムシダマシ Platydema nigropictum 皇・- ・-・-・-・-・-・-
ベニモンキノコゴミムシダマシ Platydema subfascia subfascia 皇・- ・-・大・板・-・-・-
チビキノコゴミムシダマシ Platydema sylvestre -・- ・-・-・-・-・芳・-
タケイキノコゴミムシダマシ Platydema takeii 皇・- ・-・-・-・-・-・-

本州に産するPlatydema
5mmより大きい---------------
●オオメキノコゴミムシダマシ Platydema lynceum 7.0-8.5mm。
●マルツヤキノコゴミムシダマシ Platydema kurama 6.0-7.2mm。
●クロツヤキノコゴミムシダマシ Platydema nigroaeneum 6.0-8.0mm。
●ヒゴキノコゴミムシダマシ Platydema higonium 5.5-6.5mm。
●クロキノコゴミムシダマシ Platydema fumosum 6.0mm前後。
5mmより小さい---------------
●アオツヤキノコゴミムシダマシ Platydema maruseuli 4.0-6.0mm。
●チビキノコゴミムシダマシ Platydema sylvestre 4.0-5.5mm。
●ツノボソキノコゴミムシダマシ Platydema recticorne 4.0-5.0mm。
●タケイキノコゴミムシダマシ Platydema takeii 5.0mm前後。
●ベニモンキノコゴミムシダマシ Platydema subfascia subfascia 4.0-5.0mm。
●ヒメオビキノコゴミムシダマシ Platydema nigropictum 3.0mm前後。
●クロオビキノコゴミムシダマシ Platydema pallidicolle 3.5-4.0mm。

見分けづらい「5ミリ以下の黒いPlatydema」4種の見分け方
●アオツヤキノコゴミムシダマシ Platydema maruseuli
オスの複眼間には平行で上反したツノがあり、その下はえぐれ、点刻を疎布する。
●チビキノコゴミムシダマシ Platydema sylvestre
雌雄ともに頭部にツノが無い。前頭中央は縦に、オスの方が強く押圧される。
●ツノボソキノコゴミムシダマシ Platydema recticorne
オスの複眼間には細い平行なツノがあり、頭楯の前縁中央には小突起がある。
●タケイキノコゴミムシダマシ Platydema takeii
オスの複眼間には前斜上向きの細長いツノがやや上反し、軽く内湾。体下面に黄褐色の微毛がある。

今回採集した10匹の比較。




 以下似たり寄ったりなので省略(笑)

今回分かったこと。
● ツノの長さと体長には関連性は無い。

今回は樹皮下で越冬中だった個体「全て」を採集したので、必ずメスが含まれていると思っていたが、全ての個体に(長さの違いはあるが)ツノが確認された。腹面には大きな違いは見られなかった。ツノが顕著に長い個体は居なかったため、もしかしたら全ての個体がメスだったかもしれない(過去に見たメスと思しき隆起程度の個体が5.2mmだったが、今回採集した個体は全て5.2mm以下だった)。しかし、短いながらもメスにもツノがあるとすれば、図鑑にはその旨の記述があるはずだと思う。いまのところ、オスとメスの腹面の違いは把握出来ていないので、逆に全ての個体がオスである可能性もあるわけだ。つまり、オスのツノの長さには、かなりの個体差があるという・・・。もし、今回の採集群の中にオスとメスが両方存在していたとすれば、ツノの部分や体長だけでは区別出来そうに無い。今回の採集群の腹面をよく見ると、(明瞭な違いは無いが)何となく末端節の両端がへこんでいるものと、末端節に凹みが無いものがおり、末端節の両端がへこんでいる個体の1体は外側に一部が飛び出していた(4段め右端の4.8mmの個体)。末端節の両端がへこんでいるものがオスだとすれば、角の部分が「隆起程度」の個体もオスだという事になってしまう。一方、末端節に凹みが無いもの(②の個体)は、ツノ長さだけ見ると今回の採集固体の中では長からず短からずの「中間」であった。やはり、今回の採集群は全てがオスか全てがメスのどちらかで、腹面の凹みの有無程度は判別点にならないと考えた方が良さそうだ。

今後の予定>
今後、ツノが顕著に長い個体を採集し、腹面を見る。ツノが顕著に長い個体が今回の採集個体と明らかに腹面が異なれば、今回の採集個体は全てメスということになり、メスの頭部は隆起程度の盛り上がり~短いツノが存在することになる。逆に、ツノが顕著に長い個体の腹面が今回の採集個体と同じに見えた場合は、今回の採集個体は全てオスだった可能性が生まれ、まだ採集したことの無い「ツノが全く無いツンツルテンの個体」がメスである可能性が高くなる。さらにツノが全く無いツンツルテンの個体を実際に採集することが出来たら、腹面を確認し、今までの個体との違いが確認できれば「ツノ(&隆起)無し=メス」が確定となる。

以上、今回のアオツヤキノコゴミムシダマシ検証報告でした。

スポンサーサイト



コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2カウンター
プロフィール

フッカーS

Author:フッカーS
東京都在住。
東京23区内にどんな虫たちが生息しているかを、自分で探して確認することにこだわってます。本格的な求虫道に入って5年目ですが、虫の世界は奥が深く、分からないことだらけです。
写真は100%コンデジで撮ってます。
当ブログでは、学名は特にイタリック体で書いていません。

カレンダー
07 | 2020/08 | 09
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
日本愛猫党
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード